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                         2006/01/05
         自主学習のコツ Vol.014
                        薮荷筒丸
     バックナンバー: http://www.flsi.co.jp/gakushu/
(途中から講読を始めた人はバックナンバーもすべて読んで下さいね。)
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新春特大号・・・というわけではありませんが、ちょっと長文
になってしまいました。

ちょっと疲れ気味です。


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3.頭をよくする方法
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彼らはとにかく、小さいときから知的好奇心が強く、知識欲が
旺盛でした。勉強することが好きで好きでたまらなかったのです。
また、考えることが好きで、さらには、勉強の効率を上げたり、
思考の効率を上げるためにはどうしたらよいかということも常に
自分で考え、自分で工夫していたのです。
効率を上げることを考えること、つまり工夫すること自体も好き
だったのです。
(しかし、たんに好きなだけではありません。強い精神力(根性、
忍耐力)を持っていたということもいろんな文献を調べるとわか
ります。)

そしてこれらの特徴は、ファインマンやフェルミに共通するだけ
でなく(私の知っている範囲では)他の頭がいいと言われている
人たちの多くが持っている特徴です。

重要なのは、旺盛な知識欲と、工夫するという精神です。これら
はどちらも根本的には知的好奇心のなせる技です。誰かに強制さ
れて身に付けたものではありません。

彼らは、小さいときから持っていた知的好奇心に基づいて学習意
欲を発揮し、問題解決の快感を味わい、それがさらに学習意欲を
盛り立て、さらに高度な問題解決ができるようになって、さらに
快感を味わう、ということの繰り返しで、段々と能力を高めてき
たのです。


以前にもお話したように、誰でも小さいときには知的好奇心が強
かったものなのです。しかし、たいていの人はそれが潰されてし
まいます。ある程度大きくなってからは、この潰されてしまった
知的好奇心を取り戻すことは容易ではないかもしれません。

しかし、幼い頃の知的好奇心を取り戻す代わりに、それに相当す
る学習意欲を高めることは可能です。



この「意欲」というのは、脳内のA10(エイテン)神経というものが
活性化されることによって起こります。A10神経は前頭前野にも
つながっており、頭をよくするためには、この神経を活性化する
ことが有効なのです。


一生懸命勉強を続けているうちに勉強のおもしろさが分かってく
ると、A10神経が活性化され、やる気がわいてきます。そうする
と多少の忍耐は苦にならなくなり、さらに勉強を続けることが
容易になってきます。

問題なのは、一番最初にどうやって学習意欲を引き出すかですね。
勉強嫌いになってしまって、まったく勉強しようとしない子供に
どうやって学習意欲を持たせるかです。

手っ取り早い方法をお話しましょう。

一つの方法は、報酬を与えるという方法です。
テストである点数以上取ったら子供の好きな物をご褒美として
あげるという方法です。こういう方法でもA10神経は活性化さ
れるのです。

ただ、子供の物欲がどんどんと高まってきたりしては困りもの
ですから、あまり高価な褒美にならないように何らかの制限を
した方がよいでしょう。

品物ではなく、ディズニーランドなど、子供の好きな所に連れ
て行ってあげるという褒美がいいかも知れません。楽しい場所
に行って遊ぶという経験自体も前頭前野の活性化につながりま
す。

別の方法としては、勉強を何か子供の好きなものに結びつける
というやり方があります。
自分の好きなことをやっている時にはA10神経が活性化されて
いますから、それに勉強をむすびつけてやると勉強することに
も意欲を持ってきます。

例えば、子供が車を好きだったとすると、自動車の主な生産国
がどこで、年間輸出量がどのくらいとかいった話から社会科の
話につなげていき、また、自動車が動く仕組みを教えて、理科
の話につなげていくといった方法です。


また、恋人のいる人は、恋人に応援してもらう(お互いに応援
し合う)ことによってもA10神経を活性化し、自分の意欲を高め
ることができます。


しかし、最終的には何のために勉強するのかを自分できちんと
理解し、自分で目標を設定することが必要です。


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ところで、「頭がいい」とはいったいどういうことなのでしょ
うか。そしてそれは本当に重要なことなのでしょうか。


昔は、知能テストの成績がいい人を「頭がいい」ととらえていた
ことがありましたが、現在では違ってきています。知能テストで
把握できるのは頭脳の機能のほんの一部にすぎません。頭のよさ
よりも、むしろ頭脳の病的な状態を検出するのが知能テストの役
割と考えたほうがいいでしょう。


現在でも「頭のよさ」に対する国際的な基準が定まっているわけ
ではありません。さまざまな定義ができますが、定義の仕方によ
っては、「頭のよさは50%くらいは遺伝で決まる」というような
話も出てきます。しかし、これは定義自体にも問題があると思う
し、そんな話をしても我々の役には立たないでしょう。
本稿では、大雑把な定義として「さまざまな問題を解決し、社会
に適用していく能力」とする考え方を採用しています。

この能力をつけるためには、たんに頭脳が活性化されていると
いうだけでなく、さまざまな知識を獲得しておく必要があります。
思考するためにはその土台となる知識が必要です。
知識といっても学校で習う知識はそのうちのほんの一部に過ぎな
いものであり、その他の知識源や体験を通して獲得する知識も
あります。また本人自身が思考し工夫した結果作り出す知識も
あります。


生物学(特に進化論)的に考えると、知識を吸収し思考する能力
は、我々人類が進化の過程で獲得してきた生命維持(ここで言う
生命維持とは個体に関するものだけでなく、子孫を残していくこ
とによって種が生き残っていくことも意味する)のための能力の
一つと考えられます。
(人類は、他の猛獣よりも力も弱いし、走るのも遅いです。一度に
たくさんの子供を産んで個体数を維持するということもできませ
ん。しかし、すぐれた頭脳と手先の器用さ、集団で協力し合うと
いう社会性の特徴を生かして他の猛獣たちに打ち勝ち、種を残し
ていくことができました。
猛獣だけでなく、さまざまな問題を解決し、生き残っていく(種
を残していく)ために人類に備えられたものが優れた頭脳である
と考えられます。)
つまり、さまざまな問題を解決し、環境に適用して、生き抜いて
いくための能力だったと考えられます。


そのために、もともと子供たちは知的好奇心が強いのです。たく
さんの知識を吸収していって、その後、優れた思考力を発揮する
ようになってくる仕組みが遺伝子によって組み込まれていると
考えられるのです。


ところが、今の世の中では、その頭がよくなる可能性がむしろ
抑圧されているように思われます。

知的好奇心が外的要因によって潰されてしまい、外的圧力によっ
て勉強を嫌なものだと思うようになっているのが現状ではないで
しょうか。


そもそも、試験をして点数をつけられたり、成績をつけられて
他の人たちと比較されるのも嫌なことです。
ましてや、成績が悪いと叱られると、ますます勉強が嫌いになっ
てしまいます。

実際フィンランドなどでは、小学校ではテストをせず、成績も
つけず、のびのびと育てるという方針に変えてから、逆に子供
たちが能力を大きく向上し、OECDの学習到達度調査(PISA)
で世界のトップの成績をあげたと言われています。(逆に日本の
順位は落ち込んでしまいました。)
フィンランドには受験競争のようなものはなく、学習塾もない
そうです。


そこで、気になる日本の統計データを示します。

(日本で)学習塾に通っている生徒の割合は、年とともに増加して
おり、1965年には37%だったのが2000年には66%にもなっています。
現在では70%近くの生徒が学習塾に通っているのです。
一方、勉強に対する意欲は年とともに減少しており、「もっと
勉強したい」と思っている生徒は1965年には66%だったのに対し、
2000年には23%に下がっています。
逆に「もう勉強したくない」と思っている生徒は1965年には5%だ
ったのが、2000年には30%に増えています。

ちょっと短絡的な見方かも知れませんが、親たちが子供を無理や
り学習塾に通わせて勉強させようとしている分、子供たちはよけ
いに勉強嫌いになっているように見えます。

そして、学習塾に通わせることによって、子供たちに本当に能力
がついたのか、ということについても疑問を感じます。

たとえば、東大や京大に合格する生徒のほとんどは、小さいとき
から学習塾漬けで教育を受けてきたと言われていますが、彼らが
身に付けてきたものは学力ではなく、たんなる受験テクニックだ、
と主張する東大や京大の先生方も少なくありません。

特に最近その傾向が顕著なようで、今の大学生は大きく学力が
低下していて、大学の先生方を悩ませています。
例えば、東大の2年生の後期に同じ内容の数学のテストした結果
が報告されていますが、年ごとに解答度が下がってきており、
1999年には1980年の半分程度まで平均点数が下がっています。
(このような状況であっても、大学側は学生たちになるべく単位
を与えて卒業できるようにさせているので、外見上は学力が大幅
に下がっていることがわかりにくいと言います。)


大学生の学力の大幅な低下の要因としては、大学入学以前の学力
が劣っていることがあげられており、「ゆとり教育」の結果、
子供たちが十分な学力を身に付けられなくなったことが根本的
な原因だとよく言われます。

しかし、本当にそれだけのことでしょうか。
たしかに「ゆとり教育」の体制にも問題があったと思いますが、
他にも問題にしなければならないことがあると思います。

本当に「ゆとり教育」だけが問題なら、日本よりも「ゆとり教育」
を徹底しているフィンランドのほうが学力が低下したはずです。
でも実際はフィンランドは逆に学力が向上しているのです。

この違いの要因は生徒の「意欲」だと思います。フィンランドの
生徒は日本よりもずっと学習に対する「意欲」が高いのです。

子供たちに勉強を強制しないがゆえに、かえって勉強の楽しさを
知り、子供たちが意欲を持って勉強に取り組むようになったこと
がフィンランドの学力向上の大きな要因だと思うのです。
フィンランドの子供たちは、もっともっと勉強することを自分た
ちから望むというのです。

フィンランドは、今の「ゆとり教育」体制下における日本に比べ
ても、学校の学習時間がずっと少ないのです。その上、学習塾
などもありません。

日本では「ゆとり教育」で余裕ができた時間が子供たちの塾の
時間に回されてしまって、結局子供たちにはあまり「ゆとりが
ない」という話もよく聞きます。
そして、子供たちの多くは、たんに教えられることを学習する
だけで、自主的に「もっと勉強したい」という余裕もないし、
意欲も失っているように見えます(先ほどの統計データがそれ
を示しています)。その結果、学習内容に未消化の部分があっ
ても、それを何とか消化しようとする意欲さえも起きないよう
に見えるのです。



今から約20年ほど前のことですが、私はある有名外資系企業の人事
部の人から、優秀な社員と出身大学との関係について以下のような
話を聞いたことがあります。(この会社は、頭脳集団と呼ばれるこ
ともある最先端の技術開発を行っている会社で、東大や京大出身の
社員もたくさんいますが、特定の大学にこだわらず、さまざまな大
学から学生を採用しています。採用は、大学時代の成績表と面接で
判断するそうですが、出身大学名は判断の対象にはしていません。)

「高い業績を上げていく優秀な社員と出身大学との相関関係をいろ
いろと調べてみたのですが、どこの大学を出ているかということと
社員の業績とにはまったく関係がないことがわかりました。
つまり、たとえ東大や京大を出ていても、優秀な者もいれば優秀で
ない者もいます。出身大学の名前とは関係がないのです。
ただ、一つだけ相関関係が見られたのは、国立大学の理系出身で
かつ英語の得意な人に、高い業績をあげていく者が多いということ
です。どうしてそうなのかはわかっていませんが。
そういうわけで、弊社では学閥を作らないように注意しています。
社内では、社員の出身大学名は伏せるように指導しています。」


ここで気になることは、「国立大学の理系出身でかつ英語の得意
な人に、高い業績をあげていく者が多い」ということです。
「英語の得意な人」に関しては、この会社が外資系企業であるた
め、英語が不自由だと支障をきたすのだろうと推測できますが、
「国立大学の理系」というのは何を意味するのでしょうか。どう
して私立の理系じゃいけないのでしょうか。

ここで、私の勝手な仮説を述べておきます。

国立大学の理系と聞いてピンとくるのは学費が安い(昔は安かっ
た)ということです。ということは、貧しい家庭に生まれながら
も勉学熱心な人が多く、学習塾などに通わずに自力で学習してき
た人が私立よりもずっと多いと考えられます。

こういう人たちには、EQ(こころの知能)が高い人が多いのです。

(「EQ こころの知能指数」
http://www.flsi.co.jp/books/eq1.htm


そして、そのEQの高さが、社会に出ても高い業績をあげる要因
となったと思えるのです。


ところで、ある学者によると、昔(昭和の初め頃まで)の高学歴
の人はEQが高いのが普通だったけれど、日本の経済成長とともに
関係が薄くなってきて、今では高学歴とEQの高さにはあまり関係
はないそうです。



本当に望まれるのは、高学歴ではなくEQの高さに基づいた「頭の
よさ」です。
そして、それは受験テクニックをみがいて有名大学に合格する「頭
のよさ」とは違います。

小さい時から学習塾漬けにして受験テクニックをみがき、最高学府
に入り、やがては官僚や有名会社に就職できたとしても、社会性や
人格に欠如のみられる人間になっては何にもなりません。そんな
人間ばかりが育っては、日本は潰れてしまいます。


皆さんには、EQの高い頭脳をみがいていって欲しい、あるいは
お子さんたちをそういう人間に育てていって欲しいと思います。



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